少将(しょうしょう)は、日本ではもともとは律令制における官職の一つ。転じて軍隊の階級の一。将官に区分され、中将の下、大佐、上級大佐、准将または代将の上に位置する。
北大西洋条約機構の階級符号(NATO階級符号)では、OF-7に相当する。また、陸海空軍でそれぞれ呼称の異なる少将を総称しtwo-star rankと呼ぶこともある。
将官のなかでは、最下級、又は准将がある場合には下から2番目の階級となる。英呼称は、陸軍:major general(メイジャー ジェネラル)、海軍:rear admiral(リア アドミラル)、ただし、他国の海軍は基本的にcounter admiralと呼ぶ。空軍は通常陸軍と同一の呼称を用いるが、イギリス連邦方式 (Commonwealth system)ではエアー・ヴァイス・マーシャル (air vice-marshal) と呼ぶ。なお、フランス革命方式を使用する国々では補職制度により「師団将軍」(divisional general) あるいは「旅団将軍」(brigade general) と呼称する。特異なケースとしてアンゴラ陸軍および空軍、そして1947年から1999年までのポルトガル陸軍および空軍ではbrigadierと呼称している。アメリカ軍やフランス陸軍および空軍(海軍は中将)では、正規階級(regular rank)における最高位とされ、それよりも上の二階級は役職に応じた一時的階級(temporary rank)である。
- 陸軍では主に師団長(准将が無い陸軍では副師団長、旅団長または団長)、陸軍省各局長等を務める。
- 海軍では主に小規模な艦隊や戦隊の司令官 (准将の無い海軍では隊群司令も)、海軍省各局長等を務める。
- 空軍では主に航空師団長や飛行集団長(准将の無い空軍では航空団司令官)等を務める。
海軍少将以上は、軍艦に乗艦すると将官旗を掲げる。また、准将を置かず、上級大将4階級制を取っている国においては「中将」が准将4階級制を取っている国の少将に相当するとされている(上級大将参照)。
日本
律令制における少将
左右近衛府の下位次官 。唐名を驍騎将軍といった。
旧日本軍
大日本帝国の陸海軍(日本軍)では、1868年6月11日(慶応4年(明治元年)閏4月21日)に軍務官を置いたときに三等海軍将(さんとうかいぐんしょう)や三等陸軍将(さんとうりくぐんしょう)を設けて文武官を分ける始めとした 。1869年8月15日(明治2年7月8日)に軍務官を廃止して兵部省や海陸軍を置いたときに三等海陸軍将に代わって海軍少将と陸軍少将を設けた 。
廃藩置県の後、明治4年8月の官制等級改定及び兵部省官等改定 や明治5年1月の官等改正及び兵部省中官等表改定など数度の変更があり 、明治5年2月の兵部省廃止及び陸軍省・海軍省設置を経て、明治6年5月8日太政官布達第154号 による陸海軍武官官等表改正で軍人の階級呼称として引き続き用いられ、西欧近代軍の階級呼称の序列に当てはめられることとなった 。
陸軍では主に旅団長・団長、軍参謀長、陸軍省各局長・参謀本部各部長等を務めた。兵科の少将以上には兵科区分がなく、陸上自衛隊でも陸将補以上は職種に分類されない。 第二次世界大戦末期になると、若手将官登用のため、師団長にも充てられた。
海軍では主に戦隊司令官、艦隊参謀長、海軍省各局長・軍令部各部長等を務めた。当初は直接戦闘を指揮する提督のみ海軍少将とされていたが、1906年(明治39年)に機関科の海軍機関総監を海軍機関中将・海軍機関少将と改称、1924年(大正13年)に海軍少将(兵科将校)と海軍機関少将(機関科将校)を海軍少将に統合している(兵機の統合は少将以上のみ)。
陸海軍の少将並びに同相当官は高等官二等相当とされ、勲四等乃至二等に叙せられ、武功著しい場合は功三級乃至一級の功級に叙せられ金鵄勲章を授与された。明治初期のアメリカ陸軍によると、本階級を准将相当とし、日本軍の将官を大将、少将、准将の三階級制と見做していた。 これは、当時、フランス式の軍制を採っていた事に起因し、外套の袖、軍刀の護拳および刀緒の星章が大将が5つ、中将が3つ、そして少将が2つであったため、中将が師団将軍に、少将が旅団将軍に対応していたためである · 。
警察予備隊(保安隊)、海上警備隊(警備隊)
陸上自衛隊の前身である警察予備隊では警察監補が、後の保安隊では保安監補が、そして海上自衛隊の前身である海上警備隊では海上警備監補が後の警備隊では警備監補が自衛隊発足時に将補に呼称を変更されている事から、少将相当とされているが、実際には、警察監は総隊総監たる警察監とそれ以外の警察監、保安監は長官の定める職に就く(甲)とそれ以外の職に就く(乙)に警備監は第二幕僚長たる警備監とそれ以外の警備監に分かれていた。なお、海上警備監は海上警備隊総監ただ一人であったため、そのような区分は無かった。階級章は総隊総監たる警察監および保安監(甲)は3つ星、総隊総監以外の警察監および保安監(乙)が2つ星、他方の海上警備監および第二幕僚長たる警備監は海軍中将が使用しているものと同一の袖章であったのに対し、第二幕僚長以外の警備監は太、細、中の配列の金線の袖章であったため、将と将補の中間の上級少将あるいは下級中将とでも言うべき位置にあり、アメリカ軍などの2スターランク的な立ち位置にあり、海上警備監補や警備監補は海軍少将が使用している袖章と同一であったものの、警察監補や保安監補が1つ星であったため、少将相当でありながらアメリカ軍などの1スターランク的な立ち位置にあった。自衛隊発足時に保安監は(甲)、(乙)の、警備監第二幕僚長たる警備監とそれ以外の警備監の区分を廃止して3つ星の将に統一されたのを受けて、保安監補および警備監補は将補に改称され、同時に外国軍の少将と同じく2つ星の階級章とされた。
自衛隊
自衛隊では陸将補・海将補・空将補(将補)にあたる。 英呼称で陸将補及び空将補はMajor Generalと、海将補はRear Admiral(この語源については単縦陣参照。)と訳されており、また海外の多くの軍隊の少将と同様、2つ星を階級章としており、 これは一般に少将と訳されるものである。なお、陸将補および空将補のフランス革命方式の呼称は「旅団将軍」となる。将補は、役職に応じて以下の2種類に分類される。なお、一覧表は2018年3月27日現在。指定職及び自衛官#自衛官と防衛省内局及び他省庁の官僚との比較も参照のこと。
防衛省以外では、内閣官房および外務省に各1名が出向する。
内閣官房では『内閣官房内閣審議官、内閣官房副長官補付』として内閣官房国家安全保障局(NSC)勤務となる。将補(一)が任命され、三幕の防衛部長もしくはそれに準ずる職に一度補職されたのち、即日内閣官房に出向する人事が発令される。出向後はまず内閣事務官に任命され、次に将補を兼任する。(例として表記は、内閣事務官 兼 陸将補。)出向解除の際は、一度将補の兼任を解除したのち、内閣事務官から将補に転任という形をとる。この人事の際、将に昇格する場合は内閣事務官から将に任命される。
また、外務省では在アメリカ日本大使館に駐在する米国首席防衛駐在官は将補(二)が指定される。
ただし、自衛隊法施行令第31条(補職の特例)により、陸上総隊司令官、方面総監、自衛艦隊司令官、地方総監、及び航空総隊司令官を除き、将をもって充てる職について将補を充てることができるとされている。
また、上記の他、外国軍との人事バランスに対応した措置が取られており、国内では少将相当として扱われるが、国外では旅団長や団長等の職とそれと同位あるいは準じる職にある将補は准将扱いを受ける。これは大部分の外国軍の旅団長などが准将ポストなのに対し少将相当である将補が同職であるため先任者となってしまうためである。
A幹部(防衛大学校(B)・一般大学(U)卒)の最短昇任者は1佐昇任から6年で、各期毎陸自4名、海自・空自各2名の計8名が昇任する(総員6名のうち1名が将補をもって充てられる米国防衛駐在官に補職された場合を除く)。
現行の叙勲制度において、将補を最終階級として退官した場合は瑞宝小綬章(旧勲四等瑞宝章)が授与される傾向にある。
2024年8月時点で女性自衛官で将補まで昇任したのは下記の10名(陸2名、海3名、空5名)であり、このうち近藤奈津枝のみが中将に相当する将に昇任している。
アメリカ
平時のアメリカ軍では少将(2つ星)が恒久的階級(permanent rank)の最高位。中将(3つ星)・大将(4つ星)は特定の役職と結びついた一時的階級(temporary rank)で、その職を離れると、現役でいるなら少将に戻る(退役すればその階級を保持できる)。これは連邦議会が現役中将・大将の数に上限を設けているためである。
- 陸軍:Major General
- 海軍:Rear Admiral(Upper Half)
- 空軍:Major General
- 海兵隊:Major General
イギリス
1921年に将官級准将が上級大佐、後の佐官級准将に置き換えられて以来、今日までのイギリス軍では少将は将官の最下位となる。
- 陸軍:Major General
- 海軍:Rear Admiral
- 空軍:Air Vice Marshal
- 海兵隊:Major General
ドイツ
- 陸軍:Generalmajor
- 海軍:Konteradmiral
- 空軍:Generalmajor
ポルトガル
陸軍および空軍の現行の呼称は1999年以降のものである。それ以前はBrigadeiroと呼称されていた。
- 陸軍:Major-general
- 海軍:Contra-almirante
- 空軍:Major-general
フランス革命方式呼称の国々
フランスやイタリア等将官の階級呼称にフランス革命方式を用いる国々において、他国の陸軍や空軍の少将を同様の表現をする場合、その国の補職制度に従い「師団将軍」と「旅団将軍」の使い分けをする。メキシコやチリなどでは旅団将軍の下位に准将あるいは代将位としてGeneral BrigadierやBrigadierなどを置いている。
フランス
- 陸軍・国家憲兵隊:Général de division
- 海軍:Contre-Amiral
- 空軍:Gènèral de division aérienne
Général de divisionのアンシャンレジーム期での呼称はLieutenant généralであり、1793年に現呼称に改められたが、1812から1848年の間、旧呼称に戻されたという経緯を持ち、1788年に当時の准将が廃止されて以来、NATOが発足するまでは中将位であった。第一次世界大戦では部隊規模の拡大や他の連合国軍との共同作戦に対し、将官の階級が二階級しかなかったため、臨時的措置として軍団長以上の高級指揮官たる中将は下掲のようにケピ帽や袖章の星章の下あるいは上にに横棒1本を付けて大将位とし、他国軍とのバランスを取ったという。
イタリア
- 陸軍・カラビニエリ・財務警察:Generale di divisione
- 海軍:Contrammiralio、上級少将:Ammiraglio di divisione
- 空軍:Generale di divsione aerea
ブラジル
陸軍に軍団将軍が無く、師団将軍が中将に、旅団将軍が少将に相当する。チリ、ペルー、エクアドル等でも同様の例がみられる。なお、空軍将官はGeneralを用いず、Brigadeiroを使うが、これはアルゼンチン空軍にもみられる。
- 陸軍:General-de-Brigada
- 海軍:Contra-Almirante
- 空軍:Brigadeiro
階級章・旗章
陸軍階級章
海軍階級章
空軍階級章
海軍少将階級旗
脚注
注釈
出典
参考文献
- 仇子揚『近代日中軍事用語の変容と交流の研究』関西大学〈博士(外国語教育学) 甲第748号〉、2019年9月20日。doi:10.32286/00019167。hdl:10112/00019167。 NAID 500001371617。NDLJP:11458181。https://kansai-u.repo.nii.ac.jp/records/15107。2024年8月9日閲覧。
- 「単行書・大政紀要・下編・第六十五巻・官職八・陸軍武官」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A04017112800、単行書・大政紀要・下編・第六十五巻・官職八・陸軍武官(国立公文書館)
- 「単行書・大政紀要・下編・第六十六巻」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A04017113000、単行書・大政紀要・下編・第六十六巻(国立公文書館)
- 「政体書ヲ頒ツ」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A15070093500、太政類典・第一編・慶応三年~明治四年・第十五巻・官制・文官職制一(国立公文書館)
- 「陸軍恩給令ヲ改正シ及ヒ海軍恩給令ヲ定ム・四条」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A15110505000、公文類聚・第七編・明治十六年・第二十一巻・兵制七・賞恤賜典・雑載(国立公文書館)
- 「明治ノ初年各種ノ名義ヲ以テ軍隊官衙等ニ奉職セシ者軍人トシテ恩給年ニ算入方」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A15112559500、公文類聚・第十六編・明治二十五年・第四十二巻・賞恤・褒賞・恩給・賑恤(国立公文書館)
- 国立国会図書館 (2007年1月). “ヨミガナ辞書” (PDF). 日本法令索引〔明治前期編〕. ヨミガナ辞書. 国立国会図書館. 2023年1月9日閲覧。
関連項目
- 代将(大佐の階級にあって少将相当の司令官の任にある者の地位等)
- 退職勧奨 (国家公務員における勧奨退職は2013年11月1日をもって廃止)
- 旅団将軍
- 師団将軍




