翻訳ミステリー大賞(ほんやくミステリーたいしょう)は、日本語に翻訳された海外のミステリー小説が対象の文学賞。翻訳家の小鷹信光、深町眞理子、白石朗、越前敏弥、田口俊樹によって創設され、2010年に第1回が発表された。2024年発表の第15回で幕を閉じることとなり、翻訳ミステリーの表彰は日本推理作家協会賞翻訳部門が試行から正式部門に昇格する。
選出方法
海外ミステリーの現役翻訳者の投票によって大賞が決まる。ベストセラーだけでなく、翻訳者が埋没させたくないと考える作品も選ばれてきた。
対象作品
- 前年11月1日から、その年の10月31日までに刊行された作品。
- 当初は、前年12月1日からとしていたが、第3回(2012年発表)より前年11月1日からとなった。
- 第1回(2010年発表):2008年12月1日~2009年11月30日刊行作品
- 第2回(2011年発表):2009年12月1日~2010年10月31日刊行作品
一次選考
- 投票者
- フィクション・ノンフィクションを問わず訳書または共訳書が1冊以上ある翻訳家。
- 当初はフィクションの訳書がある翻訳家(2010年発表分は約350人)に限っていたが、一次投票では第7回(2016年発表)からノンフィクションの翻訳家も投票できるようになった。
- 投票方法
- 各投票者は、5作品を順位を付けて選び、投票する(5作品に満たない場合は無効票)。
- 各投票に以下の点数を付けて集計する。1位5点、2位4点、3位3点、4位2点、5位1点。
- 投票結果を参考にして、予選委員会が5作を目安に大賞候補作品を選出する(2013年発表分は6作品、2014年発表分は7作品)。
- 予選委員会は、前年度の大賞受賞作の翻訳者を含む5名。
- なお、第2回(2011年発表)までは、投票者は最大3作品を順位を付けて選び、3作品選んだ場合は1位=3点/2位=2点/3位=1点、2作品選んだ場合は1位=2点/2位=1点、1作品のみ選んだ場合は1位=1点として、全投票を集計し、上位5作を大賞候補作品とした。
二次選考
- 投票者
- フィクション・ノンフィクションを問わず訳書または共訳書が1冊以上ある翻訳家のうち、大賞候補作すべてを読み終えている者(大賞候補作は5作品。ただし、2013年発表は6作品、2014年発表は7作品)。
- 当初はフィクションの訳書がある翻訳家に限っていたが、第6回(2015年発表)の二次投票からノンフィクションの翻訳家も投票できるようになった。
- 投票方法
- 各投票者は、候補作のうち1作品を選び、投票する。
発表
- 翌年4月に受賞作が発表される。併せて、各投票者の名前と投票作品、各候補作の獲得点数も公開される。
受賞作品
読者賞
「翻訳ミステリー読者賞」が2012年度より催されている。翻訳家の投票による翻訳ミステリー大賞とは異なり、一般読者の投票により受賞作が決定される。翻訳ミステリー大賞は翻訳ミステリー大賞シンジケートが運営しているが、読者賞は別の有志により運営されている。賞の発表は、翻訳ミステリー大賞と同じ日に、同じ会場にて行われる。
第1回(2012年度)では、投票者各自が投票したい作品を1冊だけ選んで投票した。第2回(2013年度)以降は、投票者各自に持ち点が与えられ、投票者各自が投票したい作品1〜3冊に持ち点を振り分ける方式がとられた。なお投票者各自に与えられた持ち点は、第2回(2013年度)は5点、第3回(2014年度)は6点。
受賞作品は以下の通り。
- 第1回(2012年度)
- 『解錠師』スティーヴ・ハミルトン著、越前敏弥 訳
- 『吊るされた女』キャロル・オコンネル著、務台夏子 訳
- 『深い疵』ネレ・ノイハウス著、酒寄進一 訳
- 第2回(2013年度) - 『三秒間の死角』アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム著、ヘレンハルメ美穂 訳
- 第3回(2014年度) - 『秘密』ケイト・モートン著、青木純子 訳
- 第4回(2015年度) - 『声』アーナルデュル・インドリダソン著、柳沢由実子 訳
- 第5回(2016年度) - 『その雪と血を』ジョー・ネスボ著、鈴木恵 訳
- 第6回(2017年度) - 『13・67』陳浩基著、天野健太郎 訳
- 第7回(2018年度) - 『カササギ殺人事件』アンソニー・ホロヴィッツ著、山田蘭 訳
出典
関連項目
- 推理小説の賞
- 翻訳ミステリーのランキング
- このミステリーがすごい!(宝島社)
- 本格ミステリ・ベスト10(原書房)
- ミステリが読みたい!(早川書房)
- 週刊文春ミステリーベスト10(文藝春秋)
- 文庫翻訳ミステリー・ベスト10(講談社)
外部リンク
- 翻訳ミステリー大賞シンジケート
- 翻訳ミステリー大賞と、その選考過程について - 翻訳ミステリー大賞シンジケート
- 翻訳ミステリー読者賞




